カテゴリー: 科学技術

  • AOM

    最初は測長用のヘテロダイン干渉計に興味を持ったのがきっかけだった。考えてみたら、光学部品の形状測定のようなホモダイン干渉計しか使ったことがなくて、ヘテロダイン干渉計の原理を真面目に考えたことがなかったな、と。

    そうしたら、2波長レーザの実現手段に興味が湧いて、特に音響光学変調器(AOM)の原理を知りたくなった。密度波が回折格子として機能すること、密度分布が正弦波に近くなるので特定の回折次数の光だけを取り出しやすいこと、この性質が偏向素子に適していることは知っているけど、周波数(波長)シフトを与えるメカニズムは知らなかったので。

    まずは日本光学会と電子情報通信学会の資料を見つけて、いずれの資料にもエネルギー保存則とドップラー効果の両方が書かれていたが、一番腹落ちできたのは、「熱中物理」という元予備校講師のサイトに書かれている説明だった。静的な位相型回折格子(定在波)への光の垂直入射から出発して、その後は段階的に話を進めて行き、最後はフォトンとフォノンのエネルギーと運動量の保存則からドップラー効果の式に辿り着けることを示して、同じものを違う観点から見たと言えることの説明になっていた。教育関係者や大学受験生の役に立てば嬉しいと書かれているが、元物理系で技術的な仕事から離れたオジサンの勉強にも役に立っている。

    若干引っ掛かっている箇所があって、完全な腹落ちには更に勉強する必要があると思うが、この部分を深掘りしたいわけではないので、一旦置いておいて次に行こうと思う。

    2波長レーザの実現手段としては、他にもゼーマン効果の利用があり、それがどんなものかは想像はできるのだが、詳細なところまでを分かっているわけではないので、また別の機会に考えてみたい。

    その前に、ヘテロダイン干渉計である。ビート(うなり)の検出なんだろうなとは思うけど、ちゃんと自分の頭で考えて理解したい。

  • AIづくし

    10月上旬なのに11月中旬の気温というのは結構堪えるが、熱いほうじ茶が旨い。週末は秋晴れになって気温も戻りそうなので、それに期待である。

    ノーベル物理学賞は機械学習だった。純粋な機械学習への貢献ということであれば、受賞者の二人と肩を並べる業績の人は他にもいるらしいが、「物理学の理論から」ということに意味があるのだろうか。違和感はあるが、近年のAIの盛り上がりを考えて物理学賞と化学賞と生理学賞のいずれかから授与するとすれば、物理学賞かなぁという気もするけど、ニューラルネットワークは人間の脳を模しているのだから生理学賞、という考えもありかな?と思ったら、化学賞にもAIが絡んでいた。

  • 若き日の不勉強を恥じる

    ある論文に倣って数値計算をしたいと思っていることは以前書いたが、一通り論文を読んで、計算結果が示す内容はおおよそ掴めたと思っている。これだけでも面白かったのだが、理論/数値計算で自分の手を動かせば、さらに理解が深まり楽しめるのだと思う。

    ただ、先に進むためには、再び/新たに学習すべきことが色々ある…ということで、手始めに「量子力学」(砂川重信)で多粒子系の理論に手をつけたのだが、最初から「ちょっと何書いてるか分からない」(富澤たけし風に)という状況になってしまった。

    自分が「置換」を正しく理解していなかったのが原因で、本では2体系を例に述べているところを、自分で3体系まで考えてみたら、疑問は氷解した。元の状態関数から対称/反対称な状態関数を作る際に、N体系の状態関数はN!個の置換の重ね合わせで表現できるわけだが、Fermi粒子の場合、その置換が2つの要素だけ入れ替える置換(=互換)を何回繰り返して得られるかによって、符号が変わる、という話である。

    あくまで試験勉強優先なので少しずつだけど、息抜きとして、こんなことも考え続けたい。

  • 偏光について考える

    仕事である技術文献を読んでいたら、「楕円偏光を、円偏光と直線偏光に分離する偏光ビームスプリッタ」のような光学素子があるかのように読めてしまい、しばし悩んだ。しかしながら、読み返してみると、「直線偏光が複屈折を持つ媒質を透過して楕円偏光になったことで生ずる(入射偏光と直交する)直線偏光成分の測定を行う光学系」というのが正しい理解のようだ。結局は普通のPBSのことである。

    それに関連して、複素屈折率を持つ媒質でのFresnel係数を求めたくなった。遥か昔に作ったExcelシートは屈折率が実数であることが前提なので、これを修正しようと思ったのだが、単に数をCOMPLEX関数で表現すれば良い訳ではなく、各種演算も複素数対応にする必要がある。一つのセルで全ての処理を書くと、セルの値が”#VALUE!”になってしまい、何がおかしいのか分からない。ここは無理をせずに複数セル分けてやったら上手く行った。別に何かに使う訳ではないのだけれど、良い気分である。

    Jones Matrixの計算もしてみたくなったが、やるなら勤務時間中、昼食後の眠気覚ましだな。

  • トポロジカル縮退

    複写依頼していた論文は届いたのだが、予想通り、すぐに読み進めるには難しい。その一方で、あれこれ調べていたら、これが本質なんだろうなと思えることがあった。

    トーラス(ドーナツ)の表面上の一点から、同一経線上を一周して元の位置に戻ってくるのと、同一緯線上を一周して戻ってくる経路は、一方から他方への連続的な変形できないけど、球面上の一点についてはそれができる、ということが本質なのだと思っている。その理解が正しいかどうかは、数学と物理、両方の準備を済ませてからの話だけれど。

    調べている途中で見つけた、Wikipediaの「種数」に書いてある「位相幾何学者とはドーナッツとマグカップを区別できない者である」というジョークが面白かった。

  • まだ何もしていないけど

    ある学術論文に倣って数値計算をやってみたいと思っている。最も重要な論文は、学生の頃にコピーしたり国会図書館で複写依頼して手元にあるのだが、そこから派生して読んでみたいと思った論文が出てきたので、その入手を試みている。Open AccessになっていてPDFを入手できる論文もあるのだが、そうでないものもあり、国会図書館に複写依頼を出した。

    しかし、学会でPDFを購入しようとすると、5000円以上するのには驚いた。永久保存したいわけではないので、これなら国会図書館で複写依頼した方がはるかに安上がりである。

    依頼した文献が送られてくるのを待つだけなんだけど、なかなかのワクワク感である。届いてからも楽しみたいけど、そこは自分の努力次第である。

  • 息抜きのような、そうでないような

    最近、修士論文のテーマに近い分野の論文を眺めている。いずれしっかり読み込んで数値計算をフォローしたいと思っているが、現状はそこから程遠い。

    修論では無限系かつ正負の電荷が同数の系を変分法で計算していたのだが、上記の論文は周期境界条件かつ電子系なので、新たに考えるべきことがある。一つはクーロンポテンシャルが周期関数になった際の処理、もう一つは系を電気的中性にするための条件である。前者はフーリエ変換を勉強し直さないと色々と忘れてしまったと実感している。後者は単位セル内の正負の電荷が同じ量になるよう一様な正電荷分布を考えるだけなのでそう難しくはないが、電磁気学の復習になるだろう。

    大きいところだと、第二量子化がある。過去に何度か勉強したんだけど、ぼんやりとしたイメージだけである。ある場所に粒子を生成するということは、ある状態に粒子を生成することの重ね合わせとして表現できて、その展開係数が波動関数、というのが今の理解。展開係数を生成/消滅演算子に置き換えました、というのが最も単純な表現だけど、これだけだと何を意味しているか分からないし、それだけの説明で済まないから量子力学の教科書ではそれなりのページ数を割いて説明しているのだろう。第二量子化に馴染むと多体問題の扱いが楽になる(計算量が減る)ということを指導教官から聞いたことがあるが、それを実感するところまで行きたいものだ。そこまで行けば、「固体の電子論」(斯波弘行)のような本を楽しめるのだと思う。あと、de Gennesの”Superconductivity of metals and alloys”とか。

    こんな感じで、自分は何を解っていないか、解るためには何をすれば良いかをコツコツ考えているが、現実逃避でこれに時間をかけ過ぎになっている。試験勉強を最優先しないと。

  • 出だしから躓く

    久しぶりに砂川重信の「量子力学」を開いた。試験勉強が最優先だけど数式を追う気力は残っているので、気分転換に読んでみようと思った次第である。ちょっと曖昧な記憶だが、大学3年か4年の頃、大学生協で一番売れている量子力学の教科書だということを知り、実物を見て心惹かれて購入したように思う。

    この本は、水素原子についてのSchrödinger方程式を演算子法で解いていること(一度は計算をフォローした)や、第二量子化(一度は計算をフォローした)や量子電磁気学の入門的なこと(サッと眺めただけ)まで書いてある割にはコンパクトにまとまっており、それでいて、必要な計算も丁寧に説明しているのが魅力だと思っている。

    ただ…最初はコンプトン効果の説明なのだが、書かれていることを理解するのに随分と時間をかけてしまった。落ち着いて考えてみれば、金属に光を照射したら際の散乱光の波長が入射光の波長と異なるという事実と、光量子説に基づいて、運動量とエネルギーの保存を考えれば理解できるという、特に難しくない内容なんだけど。大学の講義でも学んだ訳だし、些か恥ずかしいものがある。

    少しずつでもこの手のコトをやっておかないと、冗談抜きで何もしなくなってしまいそうなので、時折書くようにしておこうと思ったが、多難な船出である(苦笑)

  • ノーベル賞

    生理学・医学賞は、受賞すべき人が受賞したという感じ。元々は別目的(確かガン治療)で研究していたと、何かの記事で読んだ記憶があるが、凄いものだ。何か関係する本を読んでみたいと思ったが、以前CRISPR-Cas9について知りたいと思い本を買ったものの、今でも積読状態であることを思い出して、それは取りやめることにした。

    物理学賞は、学生の頃に同じ学科内でフェムト秒レーザをやっている研究室があったし、仕事関係でもその話は聞いたことがあるので、漠然と「その上か」という感じ。X(旧Twitter)で「電子の超高速運動を観測する・操作する」(日本物理学会誌 Vol. 71, No. 12, 2016)という記事が紹介されていたので読んでみたが、分からないことだらけである(苦笑)

    化学賞は、量子ドットと言われると、自分が知っている物性物理の方(単電子トランジスタなど)に引っ張られてしまう。波長の変換に用いるという原理的なところも物理学っぽいけれど、がん細胞の可視化という当初の目的や、その構造が化学だったのだろうか。

  • 「すごい物理学講義」(前半)

    夏休みに物理系の本を読もうと思い、最初は量子コンピュータ関連の本にするつもりだったのだが、ネットで物理系の読み物を調べてこの本の存在を知り、先にこちらを読みたくなってしまった。

    単純に物理学の発展を書いた本だと、非専門家が書いた、人間模様が中心の本を想像するのだが(それはそれで楽しめるのだが)、この本は、その道の専門家(著者の専門はループ量子重力理論)が数式を使わずにイメージを膨らませてくれる、丁寧な説明だと感じられる。それでも難しく感じる箇所は多々あるが、それは自分の実力である(苦笑)

    また、ギリシア哲学(ループ量子重力理論にも大きな影響を与えているらしい)に言及した導入や、随所に出てくる心に染み入る表現も良い。「何事であれ、誰かが理解した後に理解するのは簡単である。難しいのは、物事を最初に理解することである。」とか、他にも良い言葉があったけど、引用するとキリがないので、日々の業務で感じることとも重複する一つだけにしておく。著者は文学賞を取ったことがあるというのも納得である。

    パウリなど、この手の本に必ず出て来そうな大物が出てこないのは少々寂しい気もするが、アインシュタインとヒルベルトの関係、アインシュタインとボーアの関係は素敵だと思った。

    ここまでは前半(第2部)までの感想であり、後半は、著者の専門分野であるループ量子重力理論に入って行くので、一気にペースダウンするだろう。ひょっとするとこのまま放置かも知れないが、ここまででも十分楽しめた。