部分的にコヒーレントな結像

コヒーレントな結像のインコヒーレントな重ね合わせ


σ=0.1σ=0.5σ=1.0

内容

照明光学系の影響を含めて光学系の結像をシミュレートしてみようと作ったプログラム。フーリエ光学の本に出ているようなコヒーレントな結像は、1個の点光源についての結像だが、面光源の場合は複数個のコヒーレント点光源での結像をインコヒーレントに重ね合わせたものになる。理論的な詳細は参考文献を読んで頂きたい。また、出力ファイルはGraph-Rで開けるようになっているので、Vectorで入手するなどして頂きたい。

2次元物体をフーリエ変換でスペクトラムにして、これに瞳関数を掛けた後で逆変換すると像になる。デフォーカスや収差は瞳関数で導入すれば良い。また、フーリエ変換にはFFTWを利用している。FFTWに関するコードは汎用性を持たせたので、今後も別のところで利用していこうと思っている。

上図は、縦1um、横10umの開口を1/5倍の光学系で縮小投影した場合のシミュレーション。左から、σ(コヒーレンスファクタ:照明光学系と投影光学系のNAの比)が0.1, 0.5, 1.0となっており、σが大きくなるほど像が太くなっていることが分かる。光学系の分解能は照明系によっても左右されるということである。顕微鏡で照明の絞りを変えるとコントラストが変わる理由がこれである。

もっと複雑なパターンを扱えるように、モデリングツールを作ろうと思ったが、現在企画倒れで今後も作成するかどうかは不明。

仕事で使えればと作ったものの、その必要性がなくなってしまったので、こんなもん誰が見るんだ?と思いつつ、取りあえずUPしてみる。また、説明が不親切だという自覚はあるので、気が向いたら補填していきたい。

それ以前に、ちゃんとバグが取れているのか怪しいが(笑)

Phase Shift Mask

縦1um、横10umの開口を2.5um間隔で並べたマスク(下図左)を、1/5倍の光学系(物体側NA=0.1、像側NA=0.5、照明系NA=0.01)で結像させたものが下図右。
通常マスク通常マスクの像
像を見ると、分解能不足で開口が2つしかないように見える。

上下の開口パターンの振幅透過率を反転させてみる。具体的には、光路長が1/2波長になるような透明材料を配置して、中央と上下の開口を通る光の位相差がπになるようにするらしい。マスクが下図左で、その像が下図右。
PSMPSMの像
中央と上下の開口の光学像が重なる部分で光が相殺して、分解能が向上していることが分かる。

光学に限ったことではないが、差動を取るというのはノイズに強いということか。

ファイル

これ。FFTWが使える環境でコンパイルして下さい。

参考文献:

渋谷眞人:「超解像の光学」(河田聡 編、学会出版センター)第7章

他にも色々あるとは思うが、自分が参考にしたのはこれ。Amazonで確認したところ、古本のみ入手可能らしい。同じ著者が書いた「回折と結像の光学」(共著、朝倉書店)「レンズ光学入門」(アドコムメディア)も好著だと思う。

寺澤恒男:「縮小投影露光装置を用いたリソグラフィの高解像力化に関する研究」

googleで検索していて見つけた博士論文で、九州工業大学の付属図書館のサイトから入手可能。なお、著者とは面識も何もありません。


(最終更新:2013.02.10)