Poissonの輝点

角スペクトル法の手習い


z=0z=2.0e6z=4.0e6

内容

googleで検索すると出てくるが、点光源からの光を円形の遮蔽物に照射した際に、その影の中心部に現れる輝点である。「O plus E」という雑誌の連載記事が妙に印象的だったので、いつか自分で計算してみたいと思っていたのだが、部分的にコヒーレントな結像の計算でFFTWのwrapperを作ったこともあり、サクッと行けるんじゃないかと思って作ったのがこれ。

計算には、角スペクトル法という手法を使っている。手順としては、

(1)入射平面波の振幅と平面物体の複素透過率の積をフーリエ変換する
(2)各平面波の位相を観測面までの距離に応じてシフトさせる
(3)それを逆変換で重ね合わせて観測面での振幅分布にする
という、シンプルな考え方である。それでいて、Fresnel回折やFraunhofer回折のような近似ではないので(誘電率の空間変化がなければ)、使い勝手が良い方法らしい(実務で活用したことがないので、断言は出来ない)。ただし、物理意味を理解しやすいかと言われると、ちょっと微妙である。あと、斜め入射の場合には、それに応じて平面波に位相分布を与えれば良いと思う。部分的にコヒーレントな結像の計算は、この考え方で行っている(はず)。

上の図は、波長を長さの単位として、半径が2500の開口部に強度分布の1/e半径が5000のガウスビーム(平面波)が入射した場合の計算結果で、開口部と観測面との距離が、左から 0、2.0e6、4.0e6 である。

注意事項としては、エイリアシングを抑制するため、計算領域を入射光&物体を定義する領域の4倍取ってゼロ詰めすることである。周期境界条件になっているので、光束が広がる場合は隣接する領域に入って干渉するため、計算に誤差が発生する。

ファイル

これ。FFTWが使える環境でコンパイルして下さい。

参考文献:

Masud Mansuripur(著)、辻内順平(訳):「シミュレーションで見る光学現象」(アドコム・メディア)

冒頭に書いた記事を含む、「O plus E」に連載されていた記事をひとまとめにした書籍。

Werner Klaus、中山朋子:「回折光学素子の数値解析とその応用」(丸善)第2章

角スペクトル法について、コンパクトにまとめて書いてあるのでは。いずれは別の章に書いてある、FDTDやRCWAの数値計算をやりたいものである。

牛山善太:「波動光学エンジニアリングの基礎」(オプトロニクス社)

角スペクトル法だけでなく、波動光学全般の勉強に良いと思う。一見すると既存の書籍の寄せ集めのように見えるが、いいとこ取りして1つの本として一貫したスタイルでまとめるのも、簡単なことではないだろう。式の導出などが丁寧で、初学者が勉強するにはこういう本が良いのでは。


(最終更新:2012.04.16)