夏休みに物理系の本を読もうと思い、最初は量子コンピュータ関連の本にするつもりだったのだが、ネットで物理系の読み物を調べてこの本の存在を知り、先にこちらを読みたくなってしまった。
単純に物理学の発展を書いた本だと、非専門家が書いた、人間模様が中心の本を想像するのだが(それはそれで楽しめるのだが)、この本は、その道の専門家(著者の専門はループ量子重力理論)が数式を使わずにイメージを膨らませてくれる、丁寧な説明だと感じられる。それでも難しく感じる箇所は多々あるが、それは自分の実力である(苦笑)
また、ギリシア哲学(ループ量子重力理論にも大きな影響を与えているらしい)に言及した導入や、随所に出てくる心に染み入る表現も良い。「何事であれ、誰かが理解した後に理解するのは簡単である。難しいのは、物事を最初に理解することである。」とか、他にも良い言葉があったけど、引用するとキリがないので、日々の業務で感じることとも重複する一つだけにしておく。著者は文学賞を取ったことがあるというのも納得である。
パウリなど、この手の本に必ず出て来そうな大物が出てこないのは少々寂しい気もするが、アインシュタインとヒルベルトの関係、アインシュタインとボーアの関係は素敵だと思った。
ここまでは前半(第2部)までの感想であり、後半は、著者の専門分野であるループ量子重力理論に入って行くので、一気にペースダウンするだろう。ひょっとするとこのまま放置かも知れないが、ここまででも十分楽しめた。