「生成AIで世界はこう変わる」(今井翔太、SB新書)を読んだ。ちなみに、先日書いた「著名なAI研究者」は、この本の著者である。各種の記事などで見聞きたことと重複する内容も少なからずあるが、いくつか印象に残ったことがある。
生成AIが創造的知能を実現できた理由として、説得力があるとされる説の一つが、「人間の創造的とされてきた作業の大半は、過去の経験の中から、価値ある新しい組み合わせを見つけることであり、生成AIは膨大なデータからの学習で、それを見つけることができるようになった」というものだそうだが、これはイノベーションの話そのものである。「イノベーション」「組み合わせ」「既存」で検索すれば、そんなことを書いた記事が色々出てくる。敢えてもう一つ加えるなら「シュンペーター(シュムペーター)」だろうか。著者もそれを意識して書いたのではないだろうか。
プロンプトエンジニエアリングに関するスキルの重要性は、先日レンズ設計について書いたことと本質は同じだと思う。その一方で、入出力に人間の介在が必要な業務であっても、誰が介在するかの問題はある。今の自分の仕事だって、当分は人間の介在が必要だろうが、その人間が自分ではなくなる可能性はここで書いた通りである。
生成AIの原理的なことは詳しく書かれている訳ではないので、そこは英語の勉強を兼ねてWolframのブログを読みたいところではある。日本語で解説を書いている人もいるようだが、オリジナルを読みたい反面、試験勉強があるので優先順位は高くはない。
日経XTECHの記事で、私の業務に関する資格試験のいくつかをChatGPTに解かせてみた、というものがあった。予備知識のない一般の人よりは優れているそうだが、解答時にその根拠も書かせるようにした結果を確認したところ、専門家でもすぐに妥当性が判断できないようなハルシネーションが存在しており、その厄介さを実感する結果となったそうだ。先日のシンポジウムでも、現状はハルシネーションが最大の問題であるという話だったが、その対策についても色々と提案されているそうである。これが解決すれば、今の自分の仕事は自分以外の人間が介在しても良い、ということになるだろうか。
原理的な理解は別にして、一周回って自分の頭の中は整理できたように思う。まぁ、変化の激しい分野なので、そのうち違った話が出て来て、再び色々考えたくなるかも知れないけど。