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_ タイトルからは自分が想定されている読者には入っていないと思っていたのだが、昨年末から読み始めて、十分興味深く読むことができた。また、「富士通の暴露本」という著者に対する印象も大きく変わった。
_ 著者は若い人間が会社を辞める理由の一つとして、やりたい仕事とやらされる仕事のギャップを挙げていたが、これには頷ける。
_ 自分が就職活動している頃は既に氷河期に突入しており、就職情報誌などでは入社後やりたいことを明確に主張できなくてはダメだと言われていた。そして、やってみたいと思う商品を開発・量産している会社を受けた時、自分が希望する分野ではなく、他の分野でしか採用はしないという話があったので、リクルーターから「それは入ってからごねればいいから、まずは会社の方に合わせて」と言われて面接に臨んだ結果、「この会社で何がしたいかが伝わってこなかった」という理由で不採用だった。噛み合わないやり取りだったという自覚はあったので結果に文句はなく、同じようなことをやっているもう1社を受けて、何を言われても「この商品をやりたい」で通した結果…かどうかは分からないが、そこに入社することになった。
_ しかし、である。入社後に「これをやりたくてこの会社に入ったんだ」という主張をすると、生意気だの黙って言われたことをやれだのと言われるのだ。この本を読む限りでは今もそうなのだろうが、採用面接だけでなく、新入社員研修でも明確な目的意識を持てと煽られながら、実際各部署に配属すると目的意識がハッキリしている方が嫌がられたのは事実である。その時の自分にそれでも押し通すだけの実力があれば違ったかも知れないが、そんなものは持ち合わせていなかった…そういう意味では当時の自分は随分とナイーヴだったんだなぁと思える(*1)。また、そんな会社にいることがダメなのだという考えもありだと思うが、今でもその会社に残っているところを見ると、私も著者の言う「レール」から飛び降りることができない一人だとも言えるかも知れない。
_ 自分の体験と重なるところが特に印象深かったので、そこだけで長文になってしまったが、Amazonのカスタマーレビューにもある通り、それ以外にも読み応えがあるのでお勧めの一冊である。