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_ 偶然ではあるが、今日一日で色々な人のシミュレーションに対する考え方を知った。
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其の一:「シミュレーションをやる人はソフト屋で、分野を問わずシミュレーションは同じようにできる」
この手の話に縁遠い人にありがちな考え方かも知れないが、説明したら「勉強になったよ」と分かってくれたので問題なし。
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其の二:「一発で実測と数%以内の誤差で結果が出ないのなら、シミュレーションは無意味」
こういう考え方の持ち主と仕事をした被害者を目の当たりにした。経験則で上手く行っているなら良いのだが、上記発言の主は、いつもカット&トライを繰り返して周囲を混乱させている。まずは定性的に振る舞いを説明できるようになるところから始めれば良いのにと思うのだが、そう言う考え方は受け入れられないらしい。しかも解析する人間に対して「こんな感じだから計算して」と言うレベルの説明だけだそうで、それで厳密な結果を期待されても辛かろう。アメリカが臨界前核実験だけで事足りるようになったのも、それまでの膨大な実験データとの比較があってこそだ(*1)。
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其の三:「市販のソフトを使うのではなく、自分で作らなくては」
必要な機能を持つ市販品が無い、作る時間を含めたコストが購入より安上がり、という理由であれば同意できる。純粋な興味やプログラミングのスキル向上を目論んで作ってみたいとか、「ブラックボックスは良くない」という考え方もアリだろうが、業務である以上制約はあるし、無条件に「自作したから偉い」という考え方は行き過ぎだ。手の届くところに市販のソフトがあるのだから、それを使いこなせるレベルになってから言う台詞だろう。
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おまけ
以前「所詮シミュレーション」と発言した人間が、したり顔で「シミュレーションは大変なんですよ」と偉い人に言っているのは噴飯物だった。
_ 今年のノーベル賞はGMR(巨大磁気抵抗効果)の発見だった。この会社に入った当初はGMRに興味があってやってみたかったのだが、その部署に配属されることはなく、間もなく会社がGMR関連から撤収してしまった。当時を偲ばせる?資料としては、日本物理学会のGMRについての論文選集(*1)が手元にあるだけだ。「固体物理」のGMR特集号のコピーも持っていたんだけど、その道が閉ざされた時に処分した記憶がある。
_ 半導体超格子やフォトニック結晶は「周期性→バンド構造」というイメージが湧きやすいのに対して、GMRの場合は相互作用する電子系の多体効果だから毛色が違う印象がある(*2)。また、そんな現象が目の前のPC内部にあるハードディスクで使われているという点でも興味深い。学問的にも実用的にも大きな影響があった発見だろう。
_ 次に開くのはいつになるか分からないが、論文選集はとっておこう。
_ これまで普段使っているソフトのカスタマイズと言えば、専用の(貧弱な)言語でマクロを作るとか、C言語を使って処理を高速化するというものだった。前者はソフト固有の知識が蓄えられるだけで、後者もsprintfさえ使えればできる、極めて簡単な測定機制御のようなもので、技術者として汎用性のある知識が得られるという感じではない。
_ 今日は特定の面を領域分割して、それぞれに固有の機能を持たせるためのモジュールを作製した。これができるようになるまでは、個々の領域に対して計算を行い、結果を自作プログラムで重ね合わせていたのだが、これで一括処理して色々なリソースが削減できるし、この手のソフトが物理法則をどのように実装しているのか、その一端を垣間見ることができたので、なかなかの満足感だった。