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今朝起きて、妙に目やにが多いと思いつつ、鏡を見たら右目の白目が腫れ上がっていた。黒目より盛り上がっていて、それが視界の端に入ってくる状態である。針でつついたらプシュッとなりそうで、怖いくらいだった。
2次試験は不合格だった。あれで合格するようなら、この試験の価値は無いくらいに思っていたので、いずれ不合格通知が来たら見ればいいやと思っていたのだが、ある人から、発表になっているから確認したらと言われてしまったので、見るだけ見ておくか、と。
いい加減、来年に向けて勉強を始めないとマズいだろう。時間の使い方を考えねば。試験勉強に限らず、大して残業している訳でもないのに、帰宅後の時間を有意義に使っているという実感がない。10月からは色々と負担が増えるので、考えどころである。
医学・生理学賞は、東工大の大隅栄誉教授が受賞された。やっぱり日本人の受賞は嬉しいものである。
余りこういうことは考えたくないが、日本の科学技術は今が一番良いときかも知れない。巷でも言われていることだが、20〜30年後に同じような状況が続いているとは考えにくいからである。大隅栄誉教授のコメントを聞いていると、この辺りを懸念されているのだろうと思っている。
物理学賞は、Thouless, Haldane, Kosterlitz という、自分が学生の頃には既に「超」が付くほど有名だった人たちが受賞した。ただ、受賞の対象となった業績と、自分が知っている業績とは異なるようである。
個人的には、この人たちの中ではHaldane、それも分数量子ホール効果の「擬ポテンシャル」である(*1)。この辺りを自分で数値計算したいなぁと思い、Lanczos法に手を着けた訳だが、所望の結果に辿り着くのはまだまだ先の話である…というか、辿り着けるのか!?(苦笑)
Thoulessの名前を最初に見たのも量子ホール系の話で、整数量子ホール効果のトポロジカルな理論である。そういう意味では受賞の理由と無関係では無いと言えるのかも知れないが…
Kosterlitzは Kosterlitz=Thouless転移 でしか存じ上げない。しかもこの言葉は何度も耳にしたのだが、恥ずかしながら、それがどのような現象であるかは未だに理解していない。時間と心に余裕ができたときに勉強したいと思う。
先日のノーベル物理学賞に関する感想だが、多くの誤りを書いていた。その後、BuzzScienceというサイトの記事(http://buzzscience.net/archives/1916)を見て概要を掴めたように思うが、現役ではないというのはこういうことなのかという気持ちと、関連する文献を読んで、20年近く前に感じたときめきを改めて感じる喜びとが、半々といったところだろうか。
今年のノーベル賞は、Kosterlitz=Thouless転移、整数量子ホール効果のトポロジカルな理論、Haldane gapを「トポロジー」で括ることができるという話らしい。また、Googleで調べると、「Haldaneの仮説」は「Haldane gap」と同じことのようだ。
次に、ノーベル賞のサイトにある"Strange phenomena in matter's flatlands" という一般向けの解説を読んだ。タイトルからして量子ホール効果とか、低次元系の話だという趣である。
常温付近の固体・液体・気体とは違って、極高温(プラズマ)や極低温(量子凝縮)だと、物質の振る舞い(相)は予期せぬものとなる、みたいな話から始まって、最初に書かれているのがKosterlitz=Thouless転移だった。2次元系の絶対零度であっても、熱揺らぎが秩序を破壊するため(秩序相がないので)相転移は存在しないと思われていたところを、「Kosterlitz=Thouless転移」なるものが存在すること、それが通常知られた氷と水の間の相転移とは異なり、低温では強固な対をなす二つの渦が、温度の上昇により独立した振る舞いを示すという物理現象だ、とのことである。具体的にどんな現象かというイメージを掴むには、もっと勉強しなきゃダメだなぁ。
次に量子ホール効果のトポロジカルな理論についてで、物体を切り貼りせず、伸ばしたり捻ったり変形させても維持される物体の性質を記述する手段がトポロジーであり、「穴の数」と階段状に変化するホール抵抗(ホールコンダクタンス)とが対応していると書かれている。学生時代の自分の研究分野だったので、これだけで何となく分かるんだけど、それまでの理論は不十分だったとも書かれていて、それならLaughlinの論文(Physical Review B23(1981),1632)はどうなんだろうと思うのだが、その辺りは後ほど。
最後に、Haldane gapの話だが、これはウェブで参考になりそうな資料を読んだ(*1)。1次元の格子があって、格子点の上に大きさSのスピンがあるとすると、Sが整数か半整数かで系の性質が全く異なるというもので、(1)Sが整数の場合には、基底状態はただ一つしか存在せず、(2)基底状態からの励起はギャップがあり(無限小のエネルギーでは励起できない)、(3)基底状態の相関関数は指数関数的に減少する、というもので、これは厳密な証明はされていないようだが、数値計算と実験でも彼の予想を裏付ける結果が得られているそうである。ただ、これが何で「トポロジカル」なのかがよく分からないので、これは今後のお題としておく。
ここまで書いて、上記解説を日本語訳されている方がいることに気がついたので、書いておく(http://scienceminestrone.blog.fc2.com/blog-entry-994.html)。
先ほどの、Laughlinの論文についてである。この論文はゼミの輪講で発表した論文なので、思い入れがある。原論文はググってみたら、米国の某大学でスキャンしたPDFをUPしている人がいたし、概要だけなら色々見つかると思う。Physics Todayの"A Topological Look at the Quantum Hall Effect"という記事のPDFがウェブで入手できて、これにはLaughlinの論文についてだけでなく、Thouless等の論文についても言及があるので、良いと思う。
ノーベル賞のサイトには、一般向けの解説だけで無く、"TOPOLOGICAL PHASE TRANSITIONS AND TOPOLOGICAL PHASES OF MATTER"という専門家向けの解説がある。これに少し目を通したのだが、"4 Quantum Hall conductance and topological band theory"において、Laughlinの論文について、"However, deeper understanding of the Hall response in real crystalline materials was missing, and a straightforward application of Laughlin's reasoning led to an apparent paradox."と書かれている。
前半で言っているのは、Laughlinの理論では、現実の電子系で微視的にどのようなことが起こっているのか分からないと言っているのだと思う。これはゼミでも話した覚えがあり、言い換えると、系の詳細を知らなくても、Landau準位や不純物等による局在を考えるだけで量子ホール効果が説明できるよね、ということでまとまったと記憶している(論文にもそう書いてあったはず)。
後半は、Laughlinの推論を深く考えずに適用すると、明らかな矛盾を生ずるということだが、これが何を意味しているか分からない。具体的な指摘はThouless等の論文でなされているのかも知れないが、この論文は持っていない。手元にある"The Quantum Hall Effect"(Prange and Girvin (Eds.), Springer, 1990)のChapter 4(Topological Considerations)をThoulessが執筆しているので、それを読もうとしたら、久保公式が出てきた…学生の時に真面目にやっておくんだったなぁ。
あと、専門家向けの解説を読むと、日本人の名前が出てくる。ノーベル賞枠が3名よりも多かったら、そういう人も受賞だったのかも知れない。
ついこの間までは、半袖でも汗だくだったのに、気がつけば長袖でも肌寒くなってしまった。こんなところで不連続な変化は欲していないのだが。