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前回の続きをちょっとだけ。
\[
T_2 = \exp\left(2\pi i \phi\right) T_1,\ \phi = \frac{eB}{h}ab
\]において、$\phi$が整数になれば磁場中でも周期境界条件が成り立つわけだが、$\phi$が整数かつLandau準位の占有率が所定の値になるよう$a$と$b$を定めるのは分数量子ホール効果のHamiltonianの対角化で使うテクニックだったような気がするので、これはいずれまたLanczos法と合わせて考える問題として置いておく。
ここでは$\phi$が有理数 $p/q$ である場合を考える(*1)。磁気単位ベクトル$\left(qa,\ b\right)$を考えて、格子ベクトルを${\bf R'} = \left(nqa, mb\right)$のように表現すれば、$qa \times b$の領域(磁気単位胞)を$p$本の磁束量子が貫いているわけだから、
\[
\frac{eB}{h}ab = \frac{p}{q} \rightarrow \frac{eB}{h}\left(qa\right)b = p
\]となるので、磁気単位ベクトル分の並進移動に関する対称性が成り立つ。そこは真面目にHamiltonianと可換であることを確認する必要もあると思うけど、それは後ほど。
ゲージに依存する話としない話の境界が分からなく、右往左往してしまった。最終的な解決には至らなかったので、続きは次の週末に。
朝寝坊して、床屋に行って、その後で酒を飲みながら上記のようなことを考えていたら、試験勉強をせず仕舞いだった。いけませんなぁ(苦笑)
砂川重信やJ.J.Sakuraiを参考に、飛ばしたままだった並進演算子(*1)の導出をした。個人的には前者の方が丁寧というか、慎重な導出に思える。
まず、簡単のために一次元だけで考えて、$x$方向へ$\delta$だけ座標系を移動させることを考える(*2)。旧座標を$x$、新座標を$x'$とすると、
\[
x' = x - \delta
\]であり、旧座標での波動関数を$\psi$、新座標での波動関数を$\psi'$で表現すると、
\[
\psi\left(x\right) = \psi\left(x' + \delta\right) = \psi'(x')
\]である。
ここで、$\delta$が無限小であるとすると、
\[
\psi'\left(x'\right) = \psi\left(x' + \delta\right) \simeq \psi\left(x'\right) + \delta \frac{d\psi\left(x'\right)}{dx'} = \left(1 + \delta\frac{d}{dx'}\right)\psi\left(x'\right)
\]となるが、$x'$を$x$に置き換えると、
\[
\psi'\left(x\right) = \psi\left(x+\delta\right) = T\left(\delta\right)\psi\left(x\right),\ T(\delta) = \left(1 + i\frac{p_x\delta}{\hbar}\right)
\]となる。式で書くと仰々しいし、途中混乱した箇所もあるが、図を描いてみるとスッキリできると思う。
さらに、有限の並進移動$\Delta$は無限小の並進移動$\Delta/N$を繰り返し合成することで得られると考える。すなわち、
\[
T\left(\Delta\right) = \lim_{N\rightarrow\infty}\left(1+\frac{i p_x \Delta}{N\hbar}\right)^N = \exp\left(\frac{i p_x \Delta}{\hbar}\right)
\]である。
ササッとできそうだと思ってやってみたが、意外と時間が掛かってしまい、試験勉強そっちのけになってしまった。試験勉強を先にやらなければダメですなぁ。
単なる符号の間違いだろうと放置していたことが、意味を持っているようだ。
「量子ホール効果」(吉岡大二郎)によると、磁場中の並進移動の生成演算子は力学的運動量 $\boldsymbol{\pi}$ ではなく、擬運動量 $\boldsymbol{K} = \boldsymbol{p} + e\boldsymbol{A} -e\boldsymbol{B}\times\boldsymbol{r}\ \left(e>0\right)$ らしい。こうするとポテンシャルが無い場合のHamiltonianと可換になるそうだ。J. Zak, "Magnetic Translation Group", Phys. Rev. 134, A1602 が大本らしいが、取り寄せるかどうかを考える前に、紙と鉛筆の計算で試行錯誤(右往左往?)をしてみようと思っている。
意外なところで躓いたが、ちょっとワクワク感がある。
先日の$\boldsymbol{K}$の定義から真面目に計算すると、簡単に
\[
K_x = \frac{\hbar}{l^2}Y,\ K_y = -\frac{\hbar}{l^2}X
\]ということが分かる。また、これも簡単に
\[
\left[K_x,\ K_y\right] = i\frac{\hbar}{l^2},\\
\left[\xi,\ X\right] = \left[\xi,\ Y\right] = \left[\eta,\ X\right] = \left[\eta,\ Y\right] = 0
\]を示すことができ、磁場中の電子のHamiltonianが
\[
H = \frac{\hbar\omega}{2l^2}\left(\xi^2 + \eta^2\right)
\]と書けることを思い出すと、$K$はHamiltonianと可換であることが分かる。
軌道中心がサイクロトロン運動の運動エネルギーに寄与する訳ないと考えれば、直感的にも納得が行く。何でこの定義で上手く行くのかは、将来のお題にしておいて、今は上手く行くから良いということにして、先に進むことにする。
今年はGWに帰省する余裕があるので(*1)、既に航空券の予約をした。しっかり帰省するには5月1日と2日に休暇を取得する必要があるのだが、そこに何らかのイベントを放り込まれたら、泣きながら往路分を買い直して、5月3日から5日までの帰省にする。
勿論、会社では休暇取得したいことを話しても、航空券を予約したことまでは話さないつもりだ…わざと意地の悪いことを言って喜ぶ人間がいそうなので。
定期(というには間が開きすぎたが)検診に行ってきた。以前、虫歯の治療で神経を抜いた歯があるのだが、歯根のところで炎症だったか化膿したことがある。最近その周辺の歯茎が盛り上がっているように感じたので、その旨伝えたのだが、単に顎の骨の形に盛り上がっているだけで、盛り上がっている場所も微妙にその歯とはずれているとのこと。更に言うと、歯茎は綺麗な状態だそうだ。
ただし、別の箇所が虫歯になっているようなので、来週そこを治療すると言われてしまった。
$\boldsymbol{\pi}$ ではなく $\boldsymbol{K}$ が正しい磁場中の並進移動の生成演算子であるとした上で、Hamiltonianと並進演算子が可換であることを確認しておくことにする。
磁場中かつ周期ポテンシャル中のHamiltonianは、
\[
H=\frac{1}{2m} \left(\boldsymbol{p}+e\boldsymbol{A}\right)^2 + V(\boldsymbol{r})
\]と書けるが、$\boldsymbol{A}$があらわに$\boldsymbol{r}$に依存するので、並進に対して不変ではない。そこで、磁場中の並進を表す演算子として、\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}} = \exp\left(\frac{i}{\hbar}\boldsymbol{R} \cdot \boldsymbol{K}\right)=\exp\left[\frac{i}{\hbar}\boldsymbol{R} \cdot \left(\boldsymbol{p} - e\boldsymbol{A}\right)\right] = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\boldsymbol{R} \cdot \left\{\boldsymbol{p} - e\left(\boldsymbol{B} \times \boldsymbol{r} / 2\right)\right\}\right]
\]を考えることにする。なお、ここではベクトルポテンシャルとして、対称ゲージ $\boldsymbol{A} = \boldsymbol{B}\times \boldsymbol{r} / 2$を選んだ。
まず、$\left[K_x, \pi_x\right] = \left[K_x, \pi_y\right] = \left[K_y, \pi_x\right] = \left[K_y, \pi_y\right] = 0$は容易に示すことができるので、Hamiltonianの第1項と並進移動の演算子は可換である(これはゲージに依存しない)。
次に、
\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}} = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left\{R_x p_x + R_y p_y + \frac{1}{2}eB\left(-R_x y + R_y x\right)\right\}\right]
\]であるから、真面目に計算すると$\left[R_x p_x + R_y p_y,\ -R_x y + R_y x\right] = 0$を示すことができるので、任意の関数を$f \left(\boldsymbol{r}\right)$とすると、
\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}}f \left(\boldsymbol{r}\right) = \exp\left[\frac{i}{2\hbar}eB\left(-R_x y + R_y x\right)\right] \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left(R_x p_x + R_y p_y\right)\right]f \left(\boldsymbol{r}\right) = \exp\left[\frac{i}{2l^2}\left(-R_x y + R_y x\right)\right] f \left(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{R}\right)
\]である。
Hamiltonianの固有関数を$\psi\left(\boldsymbol{r}\right)$とすると、$V\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) = V\left(\boldsymbol{r}\right),\ \psi\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) = \psi\left(\boldsymbol{r}\right)$であるから、
\[
\left[\tilde{T}_{\boldsymbol{R}}V\left(r\right) - V\left(r\right)\tilde{T}_{\boldsymbol{R}}\right]\psi\left(\boldsymbol{r}\right) = \exp\left[\frac{i}{2l^2}\left(-R_x y + R_y x\right)\right] V\left(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{R}\right) \psi\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) - V\left(\boldsymbol{r}\right)\exp\left[\frac{i}{2l^2}\left(-R_x y + R_y x\right)\right] \psi \left(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{R}\right) = 0
\]となり、Hamiltonianの第2項も並進演算子と可換であることが分かる(第1項の処理がこれで良いのかちょっと気になる)。
以上より、並進演算子とHamiltonianは可換であることを確認したが、後半の議論はゲージに依存しているので少々気持ち悪い(*1)。Landauゲージにするとどうなるか気にはなるが、取りあえず先に進む。