週記以上日記未満 in January, 2017

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Jan.21,2017 (Sat)

▼ 磁場中の並進移動(2)

前回の続きをちょっとだけ。

\[
T_2 = \exp\left(2\pi i \phi\right) T_1,\ \phi = \frac{eB}{h}ab
\]において、$\phi$が整数になれば磁場中でも周期境界条件が成り立つわけだが、$\phi$が整数かつLandau準位の占有率が所定の値になるよう$a$と$b$を定めるのは分数量子ホール効果のHamiltonianの対角化で使うテクニックだったような気がするので、これはいずれまたLanczos法と合わせて考える問題として置いておく。

ここでは$\phi$が有理数 $p/q$ である場合を考える(*1)。磁気単位ベクトル$\left(qa,\ b\right)$を考えて、格子ベクトルを${\bf R'} = \left(nqa, mb\right)$のように表現すれば、$qa \times b$の領域(磁気単位胞)を$p$本の磁束量子が貫いているわけだから、
\[
\frac{eB}{h}ab = \frac{p}{q} \rightarrow \frac{eB}{h}\left(qa\right)b = p
\]となるので、磁気単位ベクトル分の並進移動に関する対称性が成り立つ。そこは真面目にHamiltonianと可換であることを確認する必要もあると思うけど、それは後ほど。

*1: 実際にはそんな都合の良い状況はまずあり得ないけど、便宜上こうしておこうという程度の話らしい

Jan.22,2017 (Sun)

▼ 足踏み

ゲージに依存する話としない話の境界が分からなく、右往左往してしまった。最終的な解決には至らなかったので、続きは次の週末に。

朝寝坊して、床屋に行って、その後で酒を飲みながら上記のようなことを考えていたら、試験勉強をせず仕舞いだった。いけませんなぁ(苦笑)

Jan.24,2017 (Tue)

▼ 意外と手間取る

砂川重信やJ.J.Sakuraiを参考に、飛ばしたままだった並進演算子(*1)の導出をした。個人的には前者の方が丁寧というか、慎重な導出に思える。

まず、簡単のために一次元だけで考えて、$x$方向へ$\delta$だけ座標系を移動させることを考える(*2)。旧座標を$x$、新座標を$x'$とすると、
\[
x' = x - \delta
\]であり、旧座標での波動関数を$\psi$、新座標での波動関数を$\psi'$で表現すると、
\[
\psi\left(x\right) = \psi\left(x' + \delta\right) = \psi'(x')
\]である。

ここで、$\delta$が無限小であるとすると、
\[
\psi'\left(x'\right) = \psi\left(x' + \delta\right) \simeq \psi\left(x'\right) + \delta \frac{d\psi\left(x'\right)}{dx'} = \left(1 + \delta\frac{d}{dx'}\right)\psi\left(x'\right)
\]となるが、$x'$を$x$に置き換えると、
\[
\psi'\left(x\right) = \psi\left(x+\delta\right) = T\left(\delta\right)\psi\left(x\right),\ T(\delta) = \left(1 + i\frac{p_x\delta}{\hbar}\right)
\]となる。式で書くと仰々しいし、途中混乱した箇所もあるが、図を描いてみるとスッキリできると思う。

さらに、有限の並進移動$\Delta$は無限小の並進移動$\Delta/N$を繰り返し合成することで得られると考える。すなわち、
\[
T\left(\Delta\right) = \lim_{N\rightarrow\infty}\left(1+\frac{i p_x \Delta}{N\hbar}\right)^N = \exp\left(\frac{i p_x \Delta}{\hbar}\right)
\]である。

ササッとできそうだと思ってやってみたが、意外と時間が掛かってしまい、試験勉強そっちのけになってしまった。試験勉強を先にやらなければダメですなぁ。

*1: 変位演算子とか、色々な呼び方があるようだ
*2: J.J.Sakuraiの定義では物理系が並進移動しているので符号が逆転するのだが、量子ホール効果に関する文献がどちらの定義なのか考えずに進んできたので、後から確認する必要がある

Jan.25,2017 (Wed)

▼ 運動量は3種類

単なる符号の間違いだろうと放置していたことが、意味を持っているようだ。

「量子ホール効果」(吉岡大二郎)によると、磁場中の並進移動の生成演算子は力学的運動量 $\boldsymbol{\pi}$ ではなく、擬運動量 $\boldsymbol{K} = \boldsymbol{p} + e\boldsymbol{A} -e\boldsymbol{B}\times\boldsymbol{r}\ \left(e>0\right)$ らしい。こうするとポテンシャルが無い場合のHamiltonianと可換になるそうだ。J. Zak, "Magnetic Translation Group", Phys. Rev. 134, A1602 が大本らしいが、取り寄せるかどうかを考える前に、紙と鉛筆の計算で試行錯誤(右往左往?)をしてみようと思っている。

意外なところで躓いたが、ちょっとワクワク感がある。

Jan.27,2017 (Fri)

▼ 軌道中心だから

先日の$\boldsymbol{K}$の定義から真面目に計算すると、簡単に
\[
K_x = \frac{\hbar}{l^2}Y,\ K_y = -\frac{\hbar}{l^2}X
\]ということが分かる。また、これも簡単に
\[
\left[K_x,\ K_y\right] = i\frac{\hbar}{l^2},\\
\left[\xi,\ X\right] = \left[\xi,\ Y\right] = \left[\eta,\ X\right] = \left[\eta,\ Y\right] = 0
\]を示すことができ、磁場中の電子のHamiltonianが
\[
H = \frac{\hbar\omega}{2l^2}\left(\xi^2 + \eta^2\right)
\]と書けることを思い出すと、$K$はHamiltonianと可換であることが分かる。

軌道中心がサイクロトロン運動の運動エネルギーに寄与する訳ないと考えれば、直感的にも納得が行く。何でこの定義で上手く行くのかは、将来のお題にしておいて、今は上手く行くから良いということにして、先に進むことにする。

Jan.28,2017 (Sat)

▼ ギャンブル

今年はGWに帰省する余裕があるので(*1)、既に航空券の予約をした。しっかり帰省するには5月1日と2日に休暇を取得する必要があるのだが、そこに何らかのイベントを放り込まれたら、泣きながら往路分を買い直して、5月3日から5日までの帰省にする。

勿論、会社では休暇取得したいことを話しても、航空券を予約したことまでは話さないつもりだ…わざと意地の悪いことを言って喜ぶ人間がいそうなので。

▼ 歯医者

定期(というには間が開きすぎたが)検診に行ってきた。以前、虫歯の治療で神経を抜いた歯があるのだが、歯根のところで炎症だったか化膿したことがある。最近その周辺の歯茎が盛り上がっているように感じたので、その旨伝えたのだが、単に顎の骨の形に盛り上がっているだけで、盛り上がっている場所も微妙にその歯とはずれているとのこと。更に言うと、歯茎は綺麗な状態だそうだ。

ただし、別の箇所が虫歯になっているようなので、来週そこを治療すると言われてしまった。

*1: 勿論、それまでしっかり試験勉強する必要はあるが

Jan.29,2017 (Sun)

▼ 磁場中の並進移動(3)

$\boldsymbol{\pi}$ ではなく $\boldsymbol{K}$ が正しい磁場中の並進移動の生成演算子であるとした上で、Hamiltonianと並進演算子が可換であることを確認しておくことにする。

磁場中かつ周期ポテンシャル中のHamiltonianは、
\[
H=\frac{1}{2m} \left(\boldsymbol{p}+e\boldsymbol{A}\right)^2 + V(\boldsymbol{r})
\]と書けるが、$\boldsymbol{A}$があらわに$\boldsymbol{r}$に依存するので、並進に対して不変ではない。そこで、磁場中の並進を表す演算子として、\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}} = \exp\left(\frac{i}{\hbar}\boldsymbol{R} \cdot \boldsymbol{K}\right)=\exp\left[\frac{i}{\hbar}\boldsymbol{R} \cdot \left(\boldsymbol{p} - e\boldsymbol{A}\right)\right] = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\boldsymbol{R} \cdot \left\{\boldsymbol{p} - e\left(\boldsymbol{B} \times \boldsymbol{r} / 2\right)\right\}\right]
\]を考えることにする。なお、ここではベクトルポテンシャルとして、対称ゲージ $\boldsymbol{A} = \boldsymbol{B}\times \boldsymbol{r} / 2$を選んだ。

まず、$\left[K_x, \pi_x\right] = \left[K_x, \pi_y\right] = \left[K_y, \pi_x\right] = \left[K_y, \pi_y\right] = 0$は容易に示すことができるので、Hamiltonianの第1項と並進移動の演算子は可換である(これはゲージに依存しない)。

次に、
\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}} = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left\{R_x p_x + R_y p_y + \frac{1}{2}eB\left(-R_x y + R_y x\right)\right\}\right]
\]であるから、真面目に計算すると$\left[R_x p_x + R_y p_y,\ -R_x y + R_y x\right] = 0$を示すことができるので、任意の関数を$f \left(\boldsymbol{r}\right)$とすると、
\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}}f \left(\boldsymbol{r}\right) = \exp\left[\frac{i}{2\hbar}eB\left(-R_x y + R_y x\right)\right] \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left(R_x p_x + R_y p_y\right)\right]f \left(\boldsymbol{r}\right) = \exp\left[\frac{i}{2l^2}\left(-R_x y + R_y x\right)\right] f \left(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{R}\right)
\]である。

Hamiltonianの固有関数を$\psi\left(\boldsymbol{r}\right)$とすると、$V\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) = V\left(\boldsymbol{r}\right),\ \psi\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) = \psi\left(\boldsymbol{r}\right)$であるから、
\[
\left[\tilde{T}_{\boldsymbol{R}}V\left(r\right) - V\left(r\right)\tilde{T}_{\boldsymbol{R}}\right]\psi\left(\boldsymbol{r}\right) = \exp\left[\frac{i}{2l^2}\left(-R_x y + R_y x\right)\right] V\left(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{R}\right) \psi\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) - V\left(\boldsymbol{r}\right)\exp\left[\frac{i}{2l^2}\left(-R_x y + R_y x\right)\right] \psi \left(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{R}\right) = 0
\]となり、Hamiltonianの第2項も並進演算子と可換であることが分かる(第1項の処理がこれで良いのかちょっと気になる)。

以上より、並進演算子とHamiltonianは可換であることを確認したが、後半の議論はゲージに依存しているので少々気持ち悪い(*1)。Landauゲージにするとどうなるか気にはなるが、取りあえず先に進む。

*1: ここでの議論は E. Brown, Phys. Rev. 133 A1038を参考にした。

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