週記以上日記未満 in February, 2017

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Feb.4,2017 (Sat)

▼ 磁場中の並進移動(4)

この時の話を修正する。

磁場中で、位置$\left(0, 0\right)$にいる電子が位置$\left(a, b\right)$まで移動すること、具体的には、$\left(0, 0\right)$から$\left(a, 0\right)$へ移動後に$\left(a, b\right)$移動する場合(経路1)と、$\left(0, 0\right)$から$\left(0, b\right)$へ移動後に$\left(a, b\right)$へ移動する場合(経路2)での違いを考える。

磁場中での並進移動を表す演算子は、「量子ホール効果」(吉岡大二郎)によると
\[
\tilde{T}_{\boldsymbol{R}} = \exp\left(\frac{i}{\hbar}{\boldsymbol{R}}\cdot{\boldsymbol{K}}\right)
\]である(導出は今後のお題)。そうすると、$K_x$と$K_y$が非可換なので、経路1と経路2では結果が異なる。

$[A, B]$がc数であるときには、$e^{A}e^{B}=e^{A+B+[A, B]/2}$が成り立つこと踏まえ、経路1を表す演算子を$\tilde{T}_1$とすると、\[
\tilde{T}_1 = \exp\left(\frac{i}{\hbar}bK_y\right)\exp\left(\frac{i}{\hbar}aK_x \right) = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left(aK_x + bK_y\right) + \frac{ab}{2\hbar^2}[K_y, K_x]\right] = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left(aK_x + bK_y\right)\right]\exp\left(-i\frac{eBab}{2\hbar}\right)
\]となる(前回の計算は交換関係の前の符号が逆だった…)。同様に、経路2を表す演算子を$\tilde{T}_2$とすると、
\[
\tilde{T}_2 = \exp\left(\frac{i}{\hbar}aK_x\right)\exp\left(\frac{i}{\hbar}bK_y \right) = \exp\left[\frac{i}{\hbar}\left(aK_x + bK_y\right)\right]\exp\left(i\frac{eBab}{2\hbar}\right)
\]であるから、
\[
\tilde{T}_2 = \exp\left(i\frac{eBab}{\hbar}\right) \tilde{T}_1=\exp\left(2\pi i\phi\right)\tilde{T}_1,\ \phi=\frac{eB}{h}ab
\]が得られる。

前回の計算では、交換関係の前の符号を逆にしていたことと、理解不足から$\boldsymbol{p}$を$\boldsymbol{K}$に置き換えるべきところを$\boldsymbol{\pi}$で置き換えたことによる符号の反転(*1)があったので、最後の結果は修正前と変わらない。これは原論文(*2)の結果とも合うので大丈夫だろう。

ということで、ここまでが過去分の修正。

もう一つ、追加しておくことがある。磁場中のHamiltonianは、ベクトルポテンシャルが座標にあらわに依存するので、並進移動に対して不変ではないことを書いたが、具体的には、
\[
\boldsymbol{A}\left(\boldsymbol{r}\right) = \boldsymbol{A}\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) + \nabla g\left(\boldsymbol{r}\right)
\]とすれば、磁場が一様であることには変わりなく、状態ベクトルに付加的な位相$\exp\left[ie g\left(\boldsymbol{r}\right)/\hbar\right]$が乗ってくる。

これは並進移動に限らず、Landauゲージ$\boldsymbol{A}_L=\left(0, Bx, 0\right)$と対称ゲージ$\boldsymbol{A}_S = \left(-By/2, Bx/2, 0\right)$の間の変換でも同じはずである。$g\left(\boldsymbol{r}\right) = Bxy/2$とすると、
\[
\boldsymbol{A}_S + \nabla g\left(\boldsymbol{r}\right) = \left(-By/2 + By/2, Bx/2 + Bx/2, 0\right) = \left(0, Bx, 0\right) = \boldsymbol{A}_L
\]なので、一方のゲージの波動関数から他方のゲージのそれに変換するには$\exp\left(ieBxy/2\hbar\right)$を掛けるか割るかすれば良いはずであり、いずれ実際に確かめたいと思う。さらに言うと、Landauゲージを取った座標系から、y=xを新たなx軸、y=-xを新たなy軸に取った座標系で考えると、ゲージは対称ゲージになるはずだが、これもいずれ紙と鉛筆の計算で確かめたい。これは高校数学のレベルだろう。

これは余談だが、gradのrotがゼロであることについては、計算すればそうなることは遠い昔に確かめたが、もう少し意味を考え直すことにした。http://irobutsu.a.la9.jp/PhysTips/divrotgrad.htmlを見ながら少し考えれば、難しくないと思う。2次元で考えた場合、x-y平面上の微小な正方形を一周する場合の勾配変化は差し引きゼロなんだから、渦ができるわけないだろう、という理解でいる(雑な考えかも知れないけど)。

今日はもうすぐ出掛けるので、これまで。試験勉強もしなければいけないのだが…(苦笑)

*1: $\left[\pi_x, \pi_y\right] = -i\frac{\hbar^2}{l^2}、\left[K_x, K_y\right] = i\frac{\hbar^2}{l^2}$だから
*2: M. Kohmoto, Annals of Physics 160, 343-354 (1985)。ノーベル賞の対象となったD. J. Thouless, M. Kohmoto, M. P. Nightingale, and M. den Nijs, Phys. Rev. Lett. 49, 405 (1982)は手元にないし、整数がトポロジカル不変量であることを明確に示したのは前者らしいこと、Webで入手できる日本語の文章が前者に倣って書かれているようなので、それを読んでいる

Feb.9,2017 (Thu)

▼ 結論は同じだが

Blochの定理を復習していて、ふと気づいた。

ここで$\psi\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) = \psi\left(\boldsymbol{r}\right)$と書いたのは誤りで、$\psi\left(\boldsymbol{r} + \boldsymbol{R}\right) = e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{R}}\psi\left(\boldsymbol{r}\right)$だろう。まぁ、一応、結論は変わらないけど。あと、$\boldsymbol{k}$が何であるかはこれからの話になるが、取りあえず、そういうものってことで。

▼ 「基礎の固体物理学」(斯波弘行、培風館)

量子ホール効果のトポロジカルな理論の勉強の予備知識として、還元ゾーンや拡張ゾーンについて復習しようとすると、手元に固体物理の本は幾つかあるが、この辺りをしっかり書かれている(と私が感じる)本がない。そこで、過去の記憶から、この本にはその手のことが書かれていたことを思い出して購入した。

過去の記憶というのは、転職した直後の時期に、グラフェンには何故バンドギャップがないのか?ということに興味があって、この本にはその辺りの記載があったので、複数回立ち読みをしたことである(*1)。その時には、全体としても必要なことがコンパクトにまとまっていると感じたので(*2)、心惹かれていたのだが、仕事が多忙になって心と時間の余裕がなくなり、グラフェンとこの本への興味が失われてしまった。

この本を買った理由はそれ以外にもある。学生時代に固体物理を専攻したものの、恥ずかしながら、固体物理の教科書を一冊読破した記憶が無い。学部生の頃に固体物理の講義はあって、テキストはIbach and Lüth(初版)だったが、幾つかの章はやらなかった。あとは、幾つかの本のつまみ食いのような感じで、誘電体とか、幾つかの分野で知識が欠落している自覚があるので、一冊通して読んで全体像を掴みたいという願望を持ち続けていた。

ただ、Kittelは版を重ねる毎に劣化するという話は自分が学生の頃からあったし、Ashcroft and Merminはボリュームがありすぎる。以前はIbach and Lüthの初版が好みだったけど、ボリュームが増えてあっさり感がなくなったし(*3)、還元ゾーンと拡張ゾーンについての説明が希薄だったということもある…ということで、コンパクトで、グラフェンのような新しいテーマにも触れていて、還元ゾーンと拡張ゾーンについての説明もそれなりだと思ったのがこの本である。

まずは還元ゾーンや拡張ゾーンのところを読んで、いずれは一冊通して読みたいものだ。

*1: 自分が本屋で見た範囲では、グラフェンについて書かれた固体物理の教科書は他になかった
*2: 式多めでかなり歯ごたえがあるだろうとも思ったが
*3: Ashcroft and Merminもそうだが、くどいくらいが良いことも多々あるので、好みの問題でしかないということは承知している

Feb.10,2017 (Fri)

▼ 可視性

前の勤め先にいた頃、メカ屋の先輩から「メカは見た目で分かるけど、光はそうは行かないから分からないんだよなぁ」と言われたことがある。今の職場でも、最近似たようなことを言われたのだが、後者の相手には、それなら熱伝導は見た目で分かるのか?という突っ込みを入れたくなってしまうのは、人間関係のなせる業か。

光でも熱伝導でも、単なる慣れの問題だと思っている。強いて言うなら、上手く想像(妄想?)を膨らませることができるかどうかだろう。

▼ あっという間

今の部署に異動になって最初に受けた研修で一緒だった人と、半年ぶりくらいに飲んだ。この人は、研修で一緒だった人たちの中では年齢や職場での立場が近く、それゆえ話の共通項が多い。

19時半から飲み始めたのだが、試験勉強や仕事の話から下ネタまで、お互い半年の間に話のネタが溜まっており、気がつけば23時半になっていた。まだ話し足りない感もあったのだが、終電を逃す訳にはいかないので、そこで散会した。

4時間くらい飲んでいたことになるが、相手はそんなに飲む人ではないし、自分もそれに合わせたペースで飲んでいたので、さほど酔うわけでもなく、楽しい時間だった。


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