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_ トリプレット、テッサーと3次方程式を解く形でレンズ形状を決めていたが、ガウスタイプもトリプレットのパワー配置から出発して、凹レンズを2分割する形でのアプローチを取ることにした。ズームレンズのような場合には、方程式を解くような形で個々のレンズ形状を決めるには無理があるので、方程式を解くアプローチに頼ることはできないのだが、このやり方であれば全系の焦点距離を維持したままでパワー配置を変えることが容易なので、慣れるまでの補助輪的な使い方をしたいと思う。
_ 既存のレンズデータから、薄肉レンズ4枚からなる光学系&トリプレットへの変換はできるようにしたので、逆にトリプレットのパワー配置からガウスタイプの形状にするツールの作成に着手した。テッサー以上に手間が掛かるだろうが、連休中に終わらせたい。また、ここまでは単なるExcelシートだが、もっと複雑なレンズになるとVBAを使うことになるかも知れない。師匠作成のツールを貰うという手もあるが、Excelではないので自宅専用になっちゃうな。
_ 「レンズ設計のすべて」(辻定彦、電波新聞社)という本がある。出版社の意向で付けた書名なのだろうが、著者自身があとがきで「最新の技術、ノウハウに関しては一切割愛している」と述べているように、すべてを含んでいる訳ではない。また、データを眺めるだけでなく自分で設計することが重要だと書いているが、変数の決め方やメリット関数の作り方のような、具体的な設計手法については書かれていない。しかしながら、Amazonのカスタマーレビューでも書かれているように、レンズ設計のノウハウやスキルを持った人には便利な本だと思う。言い方を変えると、ノウハウやスキルを得たいと思う人がこの本だけで勉強するには無理がある。師匠にも、この本のデータを見て、同じタイプのレンズの異なる設計、異なるタイプのレンズの比較をするように言われたが、独学でやっていたらどこかで挫折していたのではないだろうか。
_ 洋書だと、"Modern Lens Design"(W.J.Smith, McGraw-Hill)に具体的な設計手法の説明が書かれている。ただし、ガウスタイプやそれより枚数が増えたレンズについては、注意点のリストはあるものの、具体的な設計手法の解説がない。"Optical System Design"(R.F.Fisher, McGraw-Hill)だと、ガウスタイプの設計として、特許の設計例を出発点に性能改善をする記述があるが、ガウスタイプの特徴についての説明はなかったと思う。テレビゲームの攻略本みたいな感じで、そうすれば上手く行くという記述だけだった記憶がある。少なくとも、ズームレンズの設計手法を解説した本はないのではないだろうか(セミナーのテキストは除く)。
_ なんだか上記の本の悪口を書いているみたいだが、言いたいことは、本を片手にソフトを操作してレンズ設計をマスターするのは、不可能ではないにしても、かなり障壁が高いのだろうということだ。Smithの本にも、経験豊富な設計者に教わるのが最善の方法だと書いてあった覚えがあるし、基本的に試行錯誤で行うもので、一部の例外を除いて理論的に綺麗に設計できるということはないのだろう。だから先人の経験を教われる環境であるか否かが大きいのだと。
_ ノウハウ的な記述が見受けられる書籍としては、共に中川治平氏の著書だが、「レンズ設計工学」「図解雑学 レンズのしくみ」だろうか。後者は非専門家向けの解説書という扱いのようだが、そんなことはない。一般の人がこの本に書いてあることをすんなりと理解できるのであれば、レンズ設計者は商売あがったりではないだろうか。
_ 自分のスキルがさらに上がるという希望的将来予測が当たったとして(笑)、上述の感想がどう変化するのか、後日振り返ってみたいものだ。
_ ガウスタイプについて、出張準備でパワー配置決定用のの計算が進んでいないのだが(まぁ、言い訳ですな)、書籍に出ている設計の解析や、書籍の記述の比較などをやっている。(1)「レンズ設計の全て」、(2)「レンズ設計法」、(3)「レンズ設計工学」、(4)「Modern Lens Design」のガウスタイプについての記述を読んでいるが、著者によって着眼点が違っていたり、逆の主張をしていたりとなかなか面白い。物理法則ではないので、そんな自由度があっても良いと思う。例えば、(4)では「後側のダブレットを分離する意味はない」と書いているが、(1)には「Gaussタイプに後群分離が存在しないことを理論的に説明した文献も存在するが、実際には第二世代のSummicron 50/2.0などがこのタイプを採用していた」という記述がある。ただし、偏芯に敏感なので製造技術が伴えば、という条件付きなので、(4)の主張はコストパフォーマンスの問題だと解釈すべきなのだろう。また、(1)(2)は真ん中の空気間隔についての説明が割合丁寧だが、(3)(4)はあっさり書いている程度のようだ。
_ もう少し比較を進めたかったが、残念ながら週末までのお預けだ。
_ 測定メインの小僧仕事をしてこいという話だったのが、測定に値しないレベルのものしかできない状況だったので、値するレベルにするにはどうするか、というところから仕事が始まった(そして、これからも続く)。先の長い仕事になりそうだ…それ以外にも、色々と思うところはあるのだが、書き始めると長くなるので書かずにおく。機会があれば酒の席ででも親しい人に話すだろう。
_ 仕事相手もホテルのフロントも日本語を話せる人がいたのでマシではあったが、全員がそうではなかったので、言葉の壁に四苦八苦であった。ホテルでは、フロントに日本語が話せない人がいた場合、私の行動は典型的日本人のそれだった気がしないでもない。後半は少し学習効果があって、先に英単語を書いたメモを用意しておき、それを見せながらのやりとりをした(*1)。それでも微妙ではあったが、割合スムーズに意思は伝わったと思う。